~秘メゴト~
「しっかし、許せんな、上領の奴!! 竹刀でボコボコにしてやりたい!」


 頬を染めて憤慨する瑠璃を見て、やっと姫乃は微かな笑みをこぼした。


「…で、姫乃はこれからどうしたいの?」


 ふたりは真っ直ぐ視線を交わす。


「…うん。先輩は、まだ好き。あんなことをされても、好きな気持ちは前よりも強くなってるんだ。…おかしいでしょ」

「んー…でも、何となく判るよ」

「私ってMなのかな!?」

「そうね。昔からそうかも」

「えっ、ウソ!」


 ふたり顔を見合わせけたけたと笑い合う。

 姫乃の心は段々とほぐれてきた。


「だけどね。…責任感で傍に居られるのも辛いし、先輩も苦しいと思うんだ」

「…姫乃は先輩が好きだから、尚更、彼の苦しむ姿を見ていたくないんだね」

「うん。それに、邪魔者にもなりたくないの」

「松本さんのこと?」


 姫乃は静かに頷いた。


「だけど、あたしは松本さんって、先輩に相手にされてないと思うけどなぁ。絶対冷たいもん。松本さんがしつこく迫ってるだけな気がするよ?」

「でも、抱き合ってキスしてたんだよ」

「無理矢理じゃないの〜? それか脅されてとか。とにかく、あたしは上領先輩が松本さんに進んでキスするとは、全然思えない」



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