翡翠の悪魔~クライシス・ゾーン~
「きゃあぁっ!!」
「!? ティリス!!」


 振り返ると、ティリスは木にぶら下がった吊り網に捕らえられていた。

 ──トリップ・ワイヤーか!

 おそらく悪魔捕獲用に仕掛けられていたものだ。予想していたのに注意をうながすのを忘れた。

 舌打ちして一歩彼女に近づいた瞬間、風を斬る音にとっさに身をよじった。

 間一髪、矢が襟(えり)をかすめる。

 飛翔した方向を見定めながら剣を抜いた──同時に無数の矢が一気に降り注ぐ!

 大剣が旋風のごとく唸りを上げて矢を弾いた。小回りが利かないぶん、剣の風圧を利用した彼ならではの荒技だ。

 矢の豪雨がピタリと止んだ。いくら放っても無駄だと悟ったか。

 ……否。


(囲まれている)


 後方から追いかけてくる者だけではない。いつの間にか殺気立った気配が森のそこかしこに充満していた。


(気配を消していた? いや、これは──)
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