翡翠の悪魔~クライシス・ゾーン~
「本当になんとお詫びしたらいいか……」
「あたしたちは全然気にしてないから」
「いや、ですが、お連れの方は……」
相当怒っている──ように見えるのだろう。
口ごもったアロルド団長の視線を追うと、ムスッとした顔で腕組みしたままの青年がいた。
先ほどからそっぽを向いてこちらに一度も目を合わせない。
それを、空色の髪をゆらしてカラカラ笑い飛ばす。
「あはは。リュートはもともとこうだから気にしないで」
(悪かったな……)
心の中で悪態をついた。視線はそらしていても話はしっかり聞いていたらしい。
宙を見つめていた隻眼をようやく団長のほうに向け、ぶっきらぼうに口を開く。
「謝罪はもういい。詳細を教えろ」
「は、はい!」
有無を言わさぬ命令口調に、折りたたんでいた背筋をピンと伸ばして敬礼した。団員たちもそれに倣(なら)う。
いや、敬礼までしなくていいんだが……と、内心呆れた。
少しも怒っていないと言えば嘘になるが、これ以上責め立てようとも思わない。
このキツイ口調に鋭い眼つきとぶっきらぼうな態度はティリスの言うように、リュートのデフォルトだ。
見た目は老け……もとい、大人びていても、状況に応じて愛想よく振る舞えるほど、この青年は器用でもなければ達観してもいなかった。
「あたしたちは全然気にしてないから」
「いや、ですが、お連れの方は……」
相当怒っている──ように見えるのだろう。
口ごもったアロルド団長の視線を追うと、ムスッとした顔で腕組みしたままの青年がいた。
先ほどからそっぽを向いてこちらに一度も目を合わせない。
それを、空色の髪をゆらしてカラカラ笑い飛ばす。
「あはは。リュートはもともとこうだから気にしないで」
(悪かったな……)
心の中で悪態をついた。視線はそらしていても話はしっかり聞いていたらしい。
宙を見つめていた隻眼をようやく団長のほうに向け、ぶっきらぼうに口を開く。
「謝罪はもういい。詳細を教えろ」
「は、はい!」
有無を言わさぬ命令口調に、折りたたんでいた背筋をピンと伸ばして敬礼した。団員たちもそれに倣(なら)う。
いや、敬礼までしなくていいんだが……と、内心呆れた。
少しも怒っていないと言えば嘘になるが、これ以上責め立てようとも思わない。
このキツイ口調に鋭い眼つきとぶっきらぼうな態度はティリスの言うように、リュートのデフォルトだ。
見た目は老け……もとい、大人びていても、状況に応じて愛想よく振る舞えるほど、この青年は器用でもなければ達観してもいなかった。