ラブリーバニーは空を飛ぶ
放課後エスケープ
始業式まで一週間をきったその日、俺と三は電車に揺られていた。
がたんごとん。
定期的なリズムで体が揺れてなんだか面白い気分になる。
向かいの席に誰も座っていないせいで流れる景色が良く見える…というか何故か電車には俺と三しか乗っていなかった。
そんなにローカルな電車なんだろうか?
朝目を覚ますともう起きていた三にいきなり、
「海に行こうか」
なんて言われてしまい、まだ夢うつつだった俺は良く理解する間もなく頷いていた。
目と頭が完璧に覚醒したのは三の手が俺の前髪を梳かしている最中だった。
それから、今に至る。
「ねえ、三…どこまで、行く、の?」
「さてね」
「……ふぅ、ん」
返答になっていない。
俺もまともな返答をする方ではないけれど、今日の三はそれと同じくらいまともじゃない。
がたんごとん。
音に合わせて体が揺れる。ゆっくりと外の景色が流れていく。
そうそう電車で遠乗りする機会なんてないから、まぁ良いかななんて思う。
「夏、こっち見てごらん」
「…ん…?」
「海」
コツコツと指で叩かれた窓の外を見ればキラキラと光る青い海が広がった。
大きい。
どうやら次が終着駅らしい。