ラブリーバニーは空を飛ぶ
「――…くん、」
「はい」
「一 三くん」
「はい、」
にのまえ、みっつ。
人の事は言えないけれど、随分変わった名前だと思った。
目の下の濃いクマが印象的だった。
静かで、落ち着いている。
感じた通り、彼は他の男子とは違っていた。
騒がしくない代わりに誰とも馴れ合ったりしない。
彼の周りに人は集まらない。
あんなに、人を惹き付けるような容姿をしているのに。
彼が来たからといって、俺の生活が何か変わる訳でもなく、そのままクラスの連中とも特に話す事なく三日が過ぎた。
『それ』のきっかけは、随分と軽かった。