ラブリーバニーは空を飛ぶ
後から聞いた話によると普段よりきびきびとした動作で物事を行っていたらしい。
不審な事をしていなくて、よかった。
「夏、お昼行こう」
「え…?」
突然呼ばれた名前。
ついさっき口をきいたばかりの彼の口から発せられた自分の名前に、強い違和感を覚えた。
「体育の時間に君が言ったんだよ、自分の事は夏と呼んでくれって。
その代わり僕の事も三って呼んでくれる約束だから」
目を瞬かせ動こうとしない俺を見かねてか腕をひっ掴んで彼――三は早口で告げた。
体育の時間の記憶はさっきも書いた通り一切、ない。
それが、彼に名前を呼ばれた(と自分が認識している)一番初めだった。
それからお互いの家まで遊びに行ったり泊まったりエスケープしたりとさまざまな事があるなんて、当時の俺は全く予想していなかった。
ただ、下らない生活に色を与えてくれた彼に対する何か大きな気持ちが残った。
-end-