バックネット裏の恋
「私と主任は何もないから、安心して、ねっ」
「信じられない」
「智美、いい加減にしないと私本気で怒るよ!」
朝から、沢村主任の訳のわからないからかいに腹が立っていた私は、有りもないことを疑う智美の一途さにほとほと呆れ大きな声を出してしまった。
「どうしたの?!」
そこにちょうど孝太郎が通りかかった。
「智美、目が赤いぞ。ははん、さては滝沢に怒られたな」
「智美、実は私ね孝太郎と付き合ってるの」
今この状態の智美を何とか納得させるにはこの咄嗟のうそしかないと思った。
「本当?そうなの孝太郎?」
智美は疑いと驚きの眼差しで孝太郎を見ている。
私は智美に気付かれないように孝太郎に目でサインを送り、口裏を合わせてもらうよう合図した。
孝太郎は何がなんだかわかっていない状態だったが、とりあえず私の送ったサインに応え、
「あっああ、そうそう。実は最近になって付き合い始めたんだ。智美にはまだ報告してなかったな、わりぃ」
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