バックネット裏の恋
「智美、わかった?もうそんな顔しないでよ」
「・・・うん」

恵美ちゃんと鼓太郎の間に何か変化が起こったとすればあの時からだったように思う。
あれは高校二年の冬、クリスマスまであと一週間となった放課後、恵美ちゃんは鼓太郎への告白作戦を由貴と冬美に相談していた。
私が部活が終わり道具を片付け部活日誌を取りに教室へ戻ると、教室の後ろの席を陣取り三人がこそこそと話をしている姿が目に入った。
「秋恵、ちょうど良かった。ちょっと来て来て」
恵美ちゃんはそう言うと占領していた場所に近くの椅子を持ってきて、私用の場所を確保してくれた。
「なになに、何の相談」
「あのね、クリスマス・・・」
「あー、そっかもうすぐだもんね。今年はどこ行く?去年と同じカラオケにする?」
「そうじゃなくて、今年のクリスマス、鼓太郎に告白することに決めたの」
「へぇ~、そうなんだ」
思わず出た返答に興味がない様子が出たのか、由貴が恵美ちゃんと冬美にばれないように私の足のすねを蹴った。
(痛っ!何よ!)
「秋恵、アンタ日誌取りに来たんでしょ?机の上に置きっ放しだったよ」
由貴はそう言って私をこの作戦会議から外そうとしていた。
正直、由貴には感謝していた。由貴はこの時既に私の気持ちに気付いていたような気がする。直接言葉にはしなかったが、私も鼓太郎を気にし始めていることに気付いていた。

< 21 / 25 >

この作品をシェア

pagetop