バックネット裏の恋
「そうそう、日誌忘れちゃって」
「秋恵、鼓太郎まだグラウンドにいる?」
「えっ、さあ~さっきまではいたけど」
「日誌、渡しに行くんでしょ?」
「うん」
「お願いがあるんだ」
「何?」
「この手紙鼓太郎に渡してほしいの」
そう言うと恵美ちゃんは薄いピンク色の可愛らしい封筒を私に差し出した。
「私が渡していいの?恵美ちゃん自分で渡したほうがいいんじゃない?」
「受け取ってくれないかもしれないから・・・」
「いいじゃん、秋恵。渡してあげなよ」
こういう時、冬美はいつも流れにまかせ余計なことを言う。
「渡してくれる?」
恵美ちゃんの一途な眼差しで頼まれると断ることもできず、仕方なくその手紙を預かった。
「わかった、あとで日誌といっしよに渡しておくから」
「ありがと」
私はこれ以上何かを頼まれるのが嫌だったので足早に教室を出た。
「何で私が渡さなきゃいけないのよ・・・」
小さな声でそうつぶやく自分がいた。
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