バックネット裏の恋
「ちょっと待ってよ、あたしの何処がおしゃべりなわけ~!みんなに迷惑かけるようなおしゃべりいつしたのよ!!」
冬美は濡れ衣を着せられたかのように半ば興奮気味だった。
当時から冬美はクラスの、そして私たち四人グループの盛り上げ役だった。
誰かが失恋すると率先して慰める会を開いていた。
私は知っていた。
ある時は皆から馬鹿にされ、毛嫌いさえされていた冬美が本当はいちばん皆に気を遣っていて、誰よりも仲間思いだったことを・・・。
でも、時々冬美の余計な一言がとんでもない誤解を招いたり、それがきっかけで事が大きくなったこともあった。
「まあまあ、冬美もそんなに興奮しないでさ、冗談だってば」
「実はさ、今日仕事が終わってから駐車場で主任に会ってさ」
「主任って、あの前に話してたイケメンの?」
「冬美ってそういうことは絶対覚えてるよね~(笑)」
恵美ちゃんはそんな目敏い冬美に本当に感心しているようだった。
「それでそれで」
「来週の土曜日、草野球の試合があるから見に来てほしいって、これ」
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