悪女と良男





何がサイテーよ?

今まで、ずっとあたしのこと、見てきたくせに。


あたしは知らない間に速く歩いていたようで。



『おーい、亜美ちゃん?

大丈夫?』


コウスケに声をかけられるまでずっと、さっきの巧みの言葉が頭の中で繰り返されていた。



「あ!あそこの店、入ろうよ!

可愛い雑貨がいっぱいあるんだよ!」


繰り返される巧の声を遮るようにあたしは言った。



『え…うん。いいよ』


さっきとは明らかに違うあたしの態度に戸惑いながら頷くコウスケ。


あ…ダメだ。

ちゃんと、コウスケの前では可愛い女の子でいないと。


あんなヤツの言葉、気にしてる場合じゃない。


そう繰り返し自分に言い聞かせ、店に入る。


「うわぁ…これ、めっちゃ可愛い!」

なんて店内ではしゃぐあたし。


でもやっぱり、頭の中ではあの言葉が、繰り返されていた。


『やっぱサイテーだな、お前』







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