悪女と良男
「え?!コウスケくんのお兄さんて、うちの高校なの?!」
別にコウスケの家族に興味なんてない。
ただ、会話を盛り上げるために聞いた家族構成。
コウスケの兄貴がうちのセンパイだろうとどうだっていい。
と、いうかコウスケとの会話の半分は、ほとんど右耳から入って左耳へと抜けていった。
要するに、会話の内容を覚えていない。
だって、あたし…見えたんだもん。
あのとき。
巧があたしに
『やっぱサイテーだな、お前』
って言ったときの巧の表情、見えたんだ。
さっきは言葉ばっかりに気を取られていた。
だから忘れていた。
あのときの巧は…明らかに傷ついたような、そんな顔をしていた。
なんであんたが…そんな顔、するのよ?
巧には…関係ないじゃない。
なのになんで…傷ついた顔なんてするワケ?
いったい…何がしたいのよ、巧。