生徒会長の悩み事
今日は珍しく放課後になにも予定が入っていない
いつもなら直ぐに家に帰るか、街をふらつくんだが…
そういう気分でもないしな
とくにすることも見つからないので適当に校舎内を歩いていると
「あ、直人。どうしたの?こんなところで」
ちょうど廊下を曲がった所で悠一と出会った
「いや、特にどうってことないんだけど…暇だったから校舎ん中歩いてた。悠こそこんなところで何してんだ?」
「ああ、彼女と待ち合わせ
何かこっちの校舎に用事があったみたいだから」
「そうか
彼女と待ち合わせ、ねぇ…って、はあ!?
お前、人待ってんの!?一秒でも待ち合わせ時間過ぎると家に帰るようなお前が!?」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでくれるな?」
「いや、人聞きが悪いって…事実だろ」
確かに待ち合わせに遅れる奴も悪いが、こいつの場合
すべてにおいて“人を待つ”ということをしない
そんな悠が誰かを待つなんて…それこそ槍が降るより珍しい
「直人、今失礼なこと考えてたよね」
「…。いいや、考えてないぞ」
「うん。始めの間は何だったのかは、あえて聞かないでおいてあげるよ」
・・・・・今は悠の優しさとその腹黒さに敬礼しておこう
その後俺達はたわいも無い会話を二三返して、その場を離れた
暫くふらついていると、ある教室のドアが空いたままになっているのが目にとまった
思わず中を覗いてみると一つのグランドピアノが置いてあった
音楽室、か…
俺は音楽室に足を踏み入れピアノに近づいた
ポーン…
静かな音楽室にラの音が響く
「久しぶりに…弾いてみるか」