生徒会長の悩み事
雨宮優月…
…面白い、か…
ただそれだけか?
俺が雨宮を気にかけるのは…
それだけの理由なのか?
いや…違うな
確かに雨宮は面白いし興味もある
だけどきっと俺は
俺は…
雨宮が羨ましいんだ
何をしても全てが“自分の力”として
周りに認められる雨宮が羨ましいんだ
俺が何をやろうとも周りの奴らは…
『さすが、東條グループの息子だな』
『東條のご子息はとても有能なのですね』
『親の七光りですね』
『やっぱり東條グループの跡取りは格が違いますね』
誰一人として“俺自身”を見てはくれない
けどあいつだけは…
『東條直人、あなた自身が…』
『その嘘臭い笑顔を無駄に振りまくのは止めてください』
『笑うのはそちらの勝手ですが…』
『貴方には関係ないことです』
あいつ…雨宮は俺を真っ直ぐ(性格に多少問題はあるが)に見てくる
東條グループとか
御曹司とか
そんなのを全て抜いて
俺自身を見てくれたヤツだった
なあ…雨宮
おまえの目に俺はどんな風に映っている?
“東條”という名を取り払った俺にはいったい何が残る…?
俺は俺自身を知りたい
俺自身は俺を知りたくない
俺は“東條”という名を誰よりも疎みながら
誰よりも“東條”という名にすがりついている、だから…
雨宮、俺はお前が怖いよ
お前と一緒にいるとき俺から“東條”という名は消える
そうすれば俺は俺自身を嫌でも知ることになるんだ
好奇心と恐怖心に煽られながら
俺は…
“ガラ…”
刹那
音楽室のドアが開いた
っ!?
俺は驚いてピアノを弾く手を止め、ドアの方に視線を向ける
そこに立っていたのは…
「えっ…」