‐奏‐ kanade
部屋には時計の秒針の音だけが響く。
沈黙に耐えられなくなった
不器用な俺は
「…そんなこともわかんねえのか」
ため息混じりに照れ隠し。
「それ本当?」
奏鈴は俺の腕の中で
どんな表情なのだろう。
「嘘でこんなこと言わねえよ。
俺は奏鈴が大事だし、
一緒に生きていたい。
嘘だと思うなら
奏鈴が嫌になるまで
告白してやる」
奏鈴が腕の中で
くすっと笑った気がしたから、
少し力を弱め奏鈴を見つめた。
案の定、笑いをこらえている
奏鈴がいた。
「笑うなよ」
「だって、嬉しいんだもん」
「…………」
「あたしが嬉しいと
奏音も嬉しいんだよね?」
「うん」
「あたしが悲しいと
奏音も悲しくて、」
「そうだよ」
「あたしが奏音のこと好きなら
奏音もあたしのこと好きなんだね」