‐奏‐ kanade
奏鈴の担当の
看護師さんや先生には
既に了承を得ているから
軽く挨拶をして外に向かう。
奏鈴の足取りはとても軽く、
知らないメロディを
口ずさんでいた。
俺は雪を眺めながら
さっきのことを思い出していた。
奏鈴の言葉、
奏鈴の涙、
奏鈴の笑顔。
奏鈴の…
『―雪が降ったらしたいこと―』
『―雪って音を消すでしょう?―』
『―あたしは、そのとき…――』
―――
「―奏鈴」
え?と振り向いた奏鈴を
直視できない。
ただ、切なかった。