なきむし ころちゃん
ゆっくり進む電車。

午後のあったかい
日差しが肌に優しい。

シートに並んで座ると
余分なチカラが抜けて
くのが分かる。

ヒロキもアタシも
今までとは違って
なんにも話さなかった。



1駅すぎてしばらくすると
電車の窓から
オンボロオバケ団地が
チラリと姿をあらわす。


町はずれにあって、
アタシたちが生まれるずっと前から
誰も住んでいなかった
ボロボロの団地。


不気味で仕方ないのに
アタシはいつも
オンボロオバケ団地を探さないと
気がすまない。


やっとアタシたちの町に戻ってきたと
思えるからだ。
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