祈り   〜「俺とキスしてみない?」番外編〜
雨川家の長男。

それが、対外的な、俺の立場。


雨川家の、つまはじき者。

それが、実質的な、俺の立場。





俺の存在が気にされるのは、罵倒される時だけ。





「海斗!いい名前を付けてもらったもんだ!
 う・み・と……まさに、お前は雨川家の膿だよ!
 お前が生まれてこなければ、何もかもうまくいったのに!」


年を重ね、ますます因業になった祖母は……あの女は、俺が何かことを起こすたびに、そう罵倒した。


母が優しく呼んでくれた同じ名を、憎しみをこめて呼ぶ。




他の誰に呼ばれても、もう、その名前からは、憎しみしか、聞こえてこないようになった。



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