祈り   〜「俺とキスしてみない?」番外編〜
「……ねえ、海斗くん」

ある夜。

俺の寝室に、忍んできた女がいた。

「……さびしいんでしょ?」

むせかえるほどの、香水のにおい。

しどけない、夜着に、包まれた豊満な体。

その白い腕で、まだ、12歳になったばかりの、俺の体を抱きしめて。



「……おかあさんが、慰めてあげるから……」


むりやり、重ねられた、唇。

酒臭い、口紅でべたついた、唇。


……俺は、死に物狂いで悲鳴を上げて、継母の手から逃れた。




「義理とはいえ、母親に手を出すなんて、末恐ろしい……やっぱりあの淫乱な女の血を受け継いでいるんだ!」



そう、祖母に罵倒されて。


俺の中で、何かが崩れた。







……そう、確かに、俺は母の血を受け継いでいる。

母そっくりの、人を惑わす美貌を。






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