祈り   〜「俺とキスしてみない?」番外編〜
でもそれは、望んだものじゃない。

俺も、……母も。


けれど。


それでも、俺が悪いというなら。



ご期待に添おうじゃないか。



俺が、ちょっと微笑むだけで、蜜に吸い寄せられる蝶のように、女は群がってくる。


俺は、彼女達に、「カイト」と呼ばせた。


母に優しく呼ばれた名前を、もう、他の誰にも呼ばれたくない。





俺は、何もしない。

何も望まないし、欲しがらない。

あらかじめ失うと分かっているなら、最初から望まなければ、苦しくない。


ただ、来るものは拒まず、去る者は追わず。

誰も、俺自身を、愛する者は、いない。

俺の、能面のように張り付けた、美しさを愛するだけ。




だから。

だれも、愛さない……。


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