祈り   〜「俺とキスしてみない?」番外編〜
「ウミトくん?……ねえ?」

目の前に、りんごの顔があった。

「大丈夫?
 何か、涙出てるけど?
 悲しい夢でも見たの?」

心配そうに、顔をのぞきこむ、りんご。

あ、そっか。

中庭で、りんごに膝枕してもらってたんだっけ。

そのまま気持ちよくて、寝ちゃったんだ。

「うーん、よく覚えてない……」

悲しい夢、だったような気がする、けど。

最後は、何だか、とっても優しい夢だった気がする。

「ウミトくん?」

「ウミト、って、呼び捨てに」

「え……」

恥ずかしそうに、頬を染めるりんご。

「ね、お願い。1回だけでいいから」

「……じゃ……ウミト」

優しく、耳に届く声。

「もいっかい」

「えー、約束と違うぅ」

「いいじゃん、減るもんじゃなし。もいっかい、ね?」

「……ウミト……」

「りんご……好きだよ」

チュッと、その顔を引きよせて、唇を重ねる。

「……私も……ウミトが大好きだよ」

真っ赤になって、でも、優しく微笑むりんご。

俺は、思わずぎゅーと抱きしめる。

「きゃー、だめ!ウミトくん!ここガッコーだってば!!」



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