永遠なる誓約
第一章
政略結婚
「ソフィーリア、先日ルナティア王国から正式に結婚の申し出があった。答えの方は…聞くまでもなく承諾だろう?」
お父様が、淡々とした義務的な口調でそう話す。
何も知らない他人が聞けば唐突にも思えるお父様の問い。
だけど私は、幼き頃からルナティア皇帝との結婚を覚悟していたためか、自分でも驚く程に冷静だった。
もちろん今回の結婚を覚悟しなければならない理由はある。
それは…
13年前に勃発した、ルナティア帝国とデュナミス王国との間の大規模な戦争。
歴史上最大の争乱とも言われているそれは、最終的に確定的な決着がつかなかったらしい。
そして両国の間に平和条約が結ばれ、16年の長き年月を経てようやく戦争は終結した。
その平和条約の内容こそ…
デュナミス王国の幼い第一王女と、ルナティア帝国の皇帝との婚姻の約束だったのだ。
お父様の言う『結婚の申し出』とは儀礼的なもので、ルナティア帝国の皇帝との結婚自体は私が7歳の頃から既に決まっている事だ。
13年前の平和条約でルナティア皇帝との婚約が決まって以来、王女である私はいつか顔も知らない男に嫁ぐのだと言われて育った。
だから良い皇妃になれるように…デュナミスとルナティアのより良い絆になれるようにと努力してきたつもりだ。
そしてその結婚について疑問に思った事等一度も無かった。
何故なら、国のためとなり得る事を実行するのがデュナミス王国第一王女としての役目なのだから。
それに今日は、私の20歳の誕生日…それは、デュナミスの王族が結婚できる最小の年齢。
この結婚を断る理由等一つも見付からない。
「ええ、喜んで」
だから私もまた、その言葉とは裏腹に淡々とした口調でそう答える。