亀吉の桜
亀吉だけは
信じてくれてる。


それだけが、
自分を支えてた。


人間が抱く
いくつもの

憎悪や妬みなどの
黒い心。


それが
嫌だった。


もっと純粋に
自分を見て欲しかった。


けど、
誰もそこまで
信じてくれなかった。


心の支え。



桜の舞う公園で

一つ輝いていた

亀の群れ。



もがきながらも、
輝いていた。



それを救えば
自分も救われる。

とっさに
思った。




亀吉が
待っているから
自分の家がある。

亀吉がいるから
自分に素直に
生きられる。




桜のように
奇跡のような
美しい心を持って、
俺を支えてくれた。



だから

桜が好きだった。



桜が咲くと、
自分の心も
亀吉のように
美しくなるような

そんな気が
いつもした。


亀吉と見る桜は
何よりも輝いていた。


俺がここまで
生きてこれたのは
亀吉が
信じてくれたから。



壊れ物の心臓を
無理矢理
動かしてでも

俺は、

お前と
生きて行きたい
と、そう思ったんだ。
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