亀吉の桜
陽一君が
中学に入学した時に入った
サッカー部の

引退の時期が来た。



引退試合。



陽一君が
最後5分に
1点を入れた。

歓声が会場を
包み込み。


だけど、
それは
2点差のゲームでは
あまり意味が無く、


試合の後、


家に帰ってから、


自分の部屋に
戻ってからも、


陽一君は


ずっと、


ずっと、


泣き続けていた。




あまりに
泣き続ける陽一君は

痺れを切らした
親と喧嘩をして、


そのまま家から
飛び出してしまった。



僕は探しにいけない。



陽一君との
約束もあるし、

むしろ、
僕の足で探していたら
陽一君を見つける前に
自分が迷子になってしまう。




それに、


僕は知ってる。




陽一君の
帰ってくる場所は
ここだって。




この家で
僕が待ち続ける限り、

陽一君の居場所は
ずっと
ここにある。




だから、


僕は探しに行けないんじゃない。




探しに行く必要が無いから
探しに行かないんだ。
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