つ ば さ

「綾人、“灯台もと暗し”って諺知ってる?」

「はい。知ってます。」

「きっと、綾人もそうだよ。」

「?」





自分の本来の力も、今の記録も、これから跳ぶ未来の記録も、意志も士気も全部。

見えていなかっただけ。



「急にさ、足元までクリアに見えすぎて怖くなったんだよ。
先に行っちゃったって言う記録たちも、実は目を逸らしてるだけ。ちゃんと綾人のそばにいるんだよ。」

「…そばに。」



綾人は足元を見た。

うん、足元だけじゃなくて、隣にも頭のうえにも、きっと全部あるんだよ。

不安になる必要はないんだから。


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