つ ば さ
涙の浮かんだ瞳、強く噛みすぎて赤い血のにじんだ口元、それを見せまいとする後ろ姿。
なかなか忘れられなかった。
だから、驚いた。
高校で綾人くんを見たときに。何かの運命なのかもしれない、とそう思ったときには足が動いていた。
明らかに友達と勧誘を逃れるようにどこかへ向かっていく彼を、呼び止めずにはいられなかった。
あの時のとこは今でも不思議。
考えるより先に身体が動くっていうのを初めて体験した。