つ ば さ
「……由里香、アイス溶ける。」
「うん!」
長いと思っていた夏は、案外すぐに終わりを迎えた。
そう思うと、1日1日がどれだけ貴重なものなんだろうとか考える。考えても仕方ないのに。
「ほら、綾人も。」
「ありがとうございます。」
先輩がくれたアイスはすでに溶けはじめてて、美味しかったけど甘さが口いっぱいに残った。
「じゃあ、またね。」
「お邪魔しました。」
「2人とも気を付けて帰れよ。」
日もすっかり落ちて暗くなったころに巧先輩の家を出た。
「また明日ね、綾人。」
「はい。…先輩、気をつけてくださいね。」
「ありがとう。」
由里香先輩は、星空の下、人の渦の中に消えて見えなくなった。