落ち魁

黙り込むあたいに女は言ったんだ

ーあんたはなんでまた？

見た所なんにもおかしくはないじゃないか。

ーあたいかい？

あたいは逃げ出したんだ

吉原を何度も何度も

ーここを何度も？

へぇ

たいした根性じゃないか。

それでこっち行きって訳かい。

ーそうさ。

あたいは兄弟の中でも一番器量がよくてね。

あたいが一番高く売れたんだよ。

ー上で頑張ればあんたも花魁になれただろうに。

なんでまた逃げ出したんだい？

あたいが話そうとした瞬間

地下牢への扉に鍵がささる

女はズルズルと着物を引きずり檻の外に顔を出す

ーあたいの客だ

今夜はあんたと話せると思ったのに

女はそういうと男を招入れ薄布をひいた