1年前の遠い春
初恋
その時。

目に飛び込んでくる
赤茶色の円。


手をのばした瞬間。

「見っけ~っっ」


あたしじゃない手が
10円玉を横取りしていく。



「返して~っっ。」

またまた廊下に
あたしの叫び声が響く。


「嫌っっ。」
満面の意地悪な笑顔を
こちらに向けて

不意に10円玉を振る。



なぜか、ドキドキする鼓動を
抑えて、手をのばす。

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