貴様!何様?会長様!?
「…迷った?」
「は、はい」
その人はますます眉間のしわを深くする。
こんなに綺麗な桜。
こんなに素敵なお庭。
だけどこの人が今出す空気は、とても冷たく感じられた。
「お前、名前は?」
「……え?」
何故名前を聞くのだろう。
それを聞いて、いったいどうするのだろう。
私の中にますます不安が募った。
だけどこの人は、少し苛立った様子でもう一度。
「名前を言えっつってんだよ」
落ち着いた声のまま、口調をきつくして言った。
「よ…吉野華奈(ヨシノハナ)と言います」
「お前、この庭の事を誰にも言うなよ?」
……はい?
せっかく私が名乗ったというのに、この人は名前には一切触れず別の話題へ切り替えた。