薄っぺらな君
『柚菜は5組の橋辺、どう思う?』

私の、学年の男子への見た目評価は学校1厳しい自信がある。誰よりも客観的で理想が高いからだと思う。
だから
【周りが酷すぎて良く見えるだけ】
を暴けるため、何だかんだ女子から色々質問される。
普通に楽しい。

「まぁ普通。ちょっとオタクっぽいとこがあるし、背が小さいけど」

『うーん…』

そう。こうやって少し厳しいことを言うとみんな眉間にシワをよせて考えこむ。
「まぁ、雰囲気が良いから一緒にいて落ち着くかもね」

『まじで?えーそれ結構よくない?』

実際、本気でその相手のことが好きな場合、私がいくら【あいつは良くない】と言っても聞かないもの。ああ、また【付き合いたいだけ】か、少しだけがっかりした。
漫画のキャラクターの様な人なんて居なくて、漫画みたいな恋も私の周りには存在しない。
突きつけられる現実は、私自身を否定するみたいに
私の恋を否定する。
『じゃあ藍そろそろ帰るー。柚菜ありがとねっ』

「じゃあねー」
(私も帰ろ…)

私は大体1人で帰る。気楽に寄り道できて、もし買う、買わないで悩んでも誰も気にしなくていい。

今日も、ビスケットが敷き詰められたみたいな道路の駅前を歩いて、電車に乗って、最寄り駅で降りる。
駅前の書店の空気、私はすごく好き。こね書店は広くてつやつやしてて、真っ白な箱みたい。

「柚菜!いらっさーい」
『あぁ、陽希』

陽希はいくつか年上のここでバイトするご近所さん。お母さん同士がすごく仲良くて、幼なじみでもある。

「ま、どうせ見にきただけだろ?」
『まぁね』
「俺を?」
『違うから』

ちょっとナルだけど。顔はまぁまぁかな?って感じ。
陽希が言うには【俺のいる時間に合わせて来る客もいる】らしい。
わざわざこの人のいる時間に合わせて来るほど、そこまでかっこよくはないというのが私の意見。

『なんかポスターとかきてないの?』
「きてないかな」
『そ。じゃあ帰るね陽希』

そう言って私は背を向けて手を振る。
「ちょっ、たまにはどっか行こうね柚菜ー」
『えー』
と言って店を出た。もう少しいたかったけど陽希がいると色々面倒だから今日は帰ろう。


外は暗く、店を分かりやすくしていた
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