サボタージュ
 「どうぞご勝手に。しかし、君は後悔する事になる」

 「警察を呼ばなかったらもっと後悔をする」

 電話機へ駆け寄り、ダイヤルを押す。1……1……0。

 だが、期待通りには電話機は動いてくれなかった。受話器からは、何も音がしない。まるで、電源を切られている様だった。

 「電源を切ってある」栗山は、手品の種明かしのように、誇らしげに言った。

 それを確認しようとすると、ピーという聞き覚えのある音が聞こえる。お湯が沸いた時に鳴る音だ。

 「ついでにコーヒーを飲む準備をしといた」栗山は、イスに座った状態のまま、言葉を続ける。「僕はコーヒーの置いてある場所がわからない。お願いできるか?」

 何を言っているんだ。この男は。

 泥棒か空き巣か盗人なのはわかった。なら、なぜこの部屋にいるのだ。普通、こういう事は、誰も来ないうちに済ますべきじゃないのか。

 しかも、住民にコーヒーを頼む泥棒など、聞いたことはない。

 「ブラックコーヒー。砂糖多めでね」
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