サボタージュ
 僕は、意識するより先に、ため息をついた。

 「君は砂糖多めのコーヒーをブラックコーヒーと呼ぶのか?」

 栗山は、馬鹿にするように小さく笑い、「赤井を含め、多くの日本人は誤解している」と言った。

 何を言っているのか、全くわからなかった。なぜ、僕の名字を知っているのかも。

 だが、それはすぐにわかった。ドアの横に、名前の書かれた表札が置かれている。それを見たのだろう。

 「ブラックコーヒーのブラックは色のことだけを表すんだ。つまり、砂糖を入れてもブラックコーヒーだ」そして、こう続けた。「俺は“君”ではなく、栗山だ。あだ名で呼んでも良いと言ったろ」

 その話を聞き、少しでも栗山を馬鹿にした自分を恥ずかしく感じた。それと同時に、今の自分の状況を思い出した。

 馴れ馴れしい、泥棒と思われる男と、ブラックコーヒーについて話している。
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ヴィンテージ
蜜柑,/著

総文字数/0

ミステリー・サスペンス0ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop