土偶伝説
 それからどれくらいコックリさんをしていただろうか、そろそろ帰ろうということになり、コックリさんを帰そうをしたけれど、コックリさんは『いいえ』を示し、帰ってはくれない。


「どうしよう。コックリさん、帰ってくれないじゃん」


 エミが泣きそうな声で云うと、リカは眉を吊り上げた。


「ちょっと、土偶、あんた何とかしなさいよ。霊感あるならコックリさんを帰すくらい簡単でしょ」


 土偶はリカを見据えた。

 土偶の視線に耐えられなくなったリカは十円玉を放し、立ち上がった。


「もういい。後は土偶が何とかしてよ。私は帰る」


 スタスタと教室の扉に向かい、扉を開けようとしたのだけれど、どういうわけか扉はびくともしない。


「ちょっと、何これ。誰かが廊下から扉が開かないように押さえてるんでしょ! 開けなさいよ」


 リカは廊下に向かって怒鳴りながら、もう一つの扉を開けに行ったが、ここも開かない。

 放心状態だった俺、池田、エミ、タエコも、そんなリカを見て駆け寄った。


「マジで開かないぞ。外から押さえるって云っても、少しくらい動くだろうに。変だな」


 池田は首を傾げている。


「もう、教室の窓から出ようぜ。ここ一階だし」


 俺は皆にそう云うと、窓に向かい開けようとしたのだが、窓は鍵が閉まっていないにも拘らず、びくともしない。窓ガラスに椅子をぶつけても割れない。

 俺達はパニックになり、女子は泣き出してしまった。冷静なのは土偶ただ一人。
 


「皆、静かにして」


 土偶は低い声でそう云うと、目を瞑り、お経のようなものを唱えた。
 すると、嘘のように教室の扉と窓は開き、一斉に外へ出れたのである。

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