土偶伝説
 放課後になり、教室にはどういうわけかクラスメート全員が残っていた。

 暗い表情で俯き、土偶の指示で、クラスメートは教室を囲むように輪になっている。


「里中、里中は真ん中に立って」


 そう云った土偶の声は低く、まるで地獄の底から響いてくるような、そんな声だった。

 恐怖を感じた俺は、土偶を無視して一番仲が良い池田に声をかけた。


「おい、どうしたんだよ! これは一体何なんだ! これから何を始めようっていうんだよ」


 ゆるりと俺に顔を向けた池田は、口の端を持ち上げ、薄気味悪い表情を浮かべた。

 やっぱり何かが変だ。池田がこんな顔するなんて、今まで一度だってない。



 俺は耐え切れなくなって、教室の扉を開けようと走り出した。

 コックリさんをしたあの日のように扉は重く、見えない力で閉じられているようにビクともしない。何度も扉を必死で開けようとする俺に、背後からはクラスメートがにじり寄ってきていた。クラスメートは全員青い顔で無表情。土偶だけが、低く、気味の悪い笑い声を上げている。


「うわ~~~。何だよ。皆どうしたっていうんだよ」


 俺は必死で扉を開けようと、更に力を込めた。


 ガラガラガラ!




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