空間ラヴァーズ
エピローグ


「お客様のお部屋番号は、70番になります。ご利用時間すぎましたら、フロントにお帰りの際こちらをお持ち下さい。」

「はい」



渡される大きく70番と書いてあるプラスティックにはさまれたレシート。
レシートには、ナイトパック1500円と記載されている。
今日は、平日だからいつもより安い。
ここは、都内某所の会員制漫画喫茶。
普通の漫画喫茶と何が違うって言ったら、一人でもペア席のような広さとやたら小綺麗な内装くらいだろうか。
あとは、値段が少し高めだ。
夜になると少し暗めの照明になる店内を、迷うことなく70番室に向かう。

「はぁ〜」


部屋に着くと、ポンッとタッチ式のスタンドを軽く叩き電気をつける。
とりあえず荷物をテレビの上の台に乗せ、服を脱ぎはじめる。
ジャケットをハンガーにかけて、着ていたフレアスカートと半袖のニットを綺麗にたたむ。
ストッキングも脱いでポイッと適当に投げ捨てる。
そして鞄の中から取り出すのは、圧縮袋に入ったTシャツにジャージ。
綺麗に巻かれてあった髪をゴムで結べば、やっと堅苦しい格好からの脱出。
ふかふかのソファに、ボンッと横になる。


「今日も疲れたなぁ…」


小さく漏れる独り言。
漫喫でくつろぐ彼女の名前は、加納 綾香。 
年齢は、26才。
職業は、建築デザイン事務所のライフコーディネーターリーダー。
普通体型。
趣味は、読書と映画鑑賞。

彼氏はいない。


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