空間ラヴァーズ

ブブブブブ…

「んっ‥」


テレビの前に置いていたバイブが大きな音をたてて目を覚ました。
朝は強いし眠りが浅いからこの生活ができているんだと綾香は思っている。
時刻は、四時五十分。
ナイトパックの利用時間は、五時までだ。
体を起こすとアイピローがずれ落ちる。
携帯のバイブを止めると毛布をたたみ、昨晩着ていた服に着替えてスッピンのまま部屋を出た。

「ありがとーございましたー」

受付の人に、プレートを返す。
来た時とは違う受付の人に変わっていた。
だらしなく伸びきった茶髪の男の子。
んー来た時にいたメガネの男の子のほうが好みかな、なんて勝手に考えたりしながら漫画喫茶を出た。

次に行く先は、ここから徒歩10分もかからずに着く24時間営業のスポーツジム。
ここには、温泉設備もついているのだ。
ここが、出来る前は漫画喫茶にある狭いシャワーを使っていたからだいぶ便利になった。
受付をすますと、真っすぐ温泉には行かず先ほど着ていたTシャツとジャージに着替える。
ランニングマシーンを使って少し運動してから、温泉に入るのだ。
少し運動をするのは、エコノミー症候群の予防のつもり。
きちんと予防になっているのは、定かではないが…とにかく朝汗をかいた後の温泉は格別に気持ちいいのだ。
こんなに朝早いのに、利用者も綾香の他に数人いる。
体型がいかにもアスリートみたいな人もいるけど、高年齢で運動が趣味です、といった感じの人、朝帰りのホストみたいな人もチラホラいる。


「運動した後の温泉っていいですよね」


「っえぇ…そうでねぇ…」


温泉に入っていたら40ぐらいおばさんに、話しかけられた。
なんでこんな時間に、おばさんが?って思ったけど自分もこんな時間に利用しているんだから何とも言えないな。
なんて思って、一人で小さく笑ってしまった。

< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop