蝕む月と甘い蜜
予定の時間まではまだ
余裕がある。
視線を上げると前に停められた
スポーツバイクが目に入った。
「今どきネイキッドなんて
珍しいな」
「…意外、詳しいの?」
自分を見上げる彼女の瞳に
熱が籠るのがわかった。
彼女は身体を起こして
オートバイに歩み寄る。
古い型のマシンはその容貌とは
逆に、手入れの行き届いた
エンジン部分から彼女のそれに
対する愛情を容易に想像できた。
「貰いものだから」
何かを思い出すように目を
伏せた女性の細い指がシートを
撫でる。
―――直感で思う。
くれた相手は男だと。