蝕む月と甘い蜜


雑誌の担当編集者との
打ち合わせに家の近くの
カフェを指定し、
少し早目に来た乃愛は
1人朝食をとっていた。

おはようございます、と
後ろから声を掛けられ乃愛は
首だけ振り返った。

爽やかな笑顔の男が
「早坂さんですよね?」と、
聞いてくる。

返事の変わりに乃愛は笑顔を
返した。

担当編集者の前原圭介とは
前担当者からの紹介で
ここ2年ほど一緒に
仕事をしてきた。

ただ、現住所が安定しない
乃愛とのやり取りは電話か
パソコンのメールのみで
会うのはお互いに初めてだった。

前原の目線が頭の上から下まで
往復する。

戻ってきてぶつかった視線に、
座ってください、と
向かいの席を示した。




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