蝕む月と甘い蜜
後ろで1つに束ねられた長い
黒髪、短めの革のジャケット、
細い足のラインを綺麗に
見せている膝下丈のパンツ、
そして透き通るような白い肌の
上に光る宝石のような瞳。
不意にその目がさらに
大きく開く。
フィルムが張ってある窓は
外からはこちらの姿は見えない。
しかし彼女は慌てた様子で
こちらに走ってきた。
運転手が窓を少し下ろす。
「ごめんなさい、気づかなくて。
すぐ退かすわ」
外から車内に響いた声は、
想像より少し低かった。