蝕む月と甘い蜜
「大学卒業とともに系列会社の
カジノ運営の役員に就任、
父親であり社長の
朔(ハジメ)氏から社長の椅子を
引き継いだのが3年前。
27歳の若社長!早坂さんは
こういう男性どう思います?」
「どうって…?」
困ったように首を傾げると、
魅力的かということです、と
前原は再び身を乗り出した。
「よくわからないけど、
社長って響きは遠い世界の
人みたいだわ」
「…じゃぁ、僕みたいな男は
どう思います?」
考える仕草を見せてさりげなく
乃愛はテーブルの隅に置かれた
伝票を指で取った。
「仕事に一生懸命な男性は
素敵だと思いますよ。
パンフレットお預かりしても
平気ですか?」
乃愛の涼しげな笑顔に前原は、
見とれたまま生返事を返した。
パンフレットと依頼書を
持つと乃愛は立ち上がる。
考えてまた連絡します、と
乃愛はカフェを後にした。