四 神 〜 しじん 〜
 “ 勾陣 ”(こうちん) は今朝の、いつもとは違う周りの雰囲気に“ 気 ”を乱され苛ついていた…。

歳は三十代後半、独身で、短めに刈り揃えられた髪には布が巻かれ、何物にも揺るがない瞳と、強い信念を持つ顔つきが、彼の性格を現している。

 統率力があり、文武に優れている彼は、村では一騎兵団を率いており、今は早朝の日課である精神統一の最中であった。



 ここは“ 匈奴 ”
      (きょうど)

 モンゴル高原を中心に、北アジアに勢力を築く
“ 遊牧国家 ”である。


 戦乱ひしめくこの時代、“ かの国 ”とは唯一
“ 協定 ”を結んでいる国で、遊牧民の特徴である優れた軍馬の育成、献上をするかわり、足りない武力を補ってもらい国を守っている。
娘を嫁がせたり、侍女として仕えに行かせる…など、様々な理由により、国には匈奴人も多い。



“ 勾陣 ”とは“ 黄竜 ”の別名・・・。



 極限られた者しか知る事のないその名前を何故、遊牧民である彼が名乗っているのか…



 …偶然…!?



…違う…。


遊牧民が付ける名前にしては珍しいし“ 勾 ”と言う文字は尊い言葉…
易々と使える文字ではない

匈奴に“ 勾陣 “と言う名前の男が居る…。



 これが黄竜城、四等官の耳に入ったのはつい最近の事…。

 予期せぬ事に伺いを立てるべく、君主に手紙を出すが“ 不明 ”との解答

 何百もの遊牧民達が、
何十にも別れて生活する
“ 家族 ”は、それぞれが独立しており、その中の一人を把握するなど到底無理な話…。


ならば…と、四等官達が過去の文献を調べに調べる
黄竜の血筋が匈奴に渡っていないかと…
 これが解決すれば、長年の“ 黄竜不在 ”問題を解決出来るのでは…と


…が、よりよい結果は得られなかった。

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