四 神 〜 しじん 〜

黄竜城・・・。


勾麟 は別れを惜しむように、生まれ育った城を眺めた…

 遠くで医師が、慌てて駆けて行くのが見える。
多分“ 麟史 ”の体調が思わしくないのだろう…


“ 麟史 ”
黄竜王 の四男である彼は、まだ四歳。
三男を生んで亡くなった母の変わりに、後妻に入った現王妃の子供である。

生まれつき体が弱く、二歳の時の高熱が元で“子種”が無いと宣告され“ 彼 ”もまた、継承者から外された一人であった…。


「 勾麟様 これを… 」

拘束していた兵士が、極秘に一本の短剣を渡す。

“ 追放 ”される者に一切の持ち物を与える事は禁じられていた…
この兵士も見つかれば、厳しい罰が下されるであろう、だが…


危険も顧みず、少しでも勾麟を助けようとする兵士達・・・。

彼らもまた、勾麟の追放を心から嘆く者達の一部であった…。


「 宣帝 がまた不穏な動きを始めたそうです…僅かながらでもお役に立てれば」

「感謝する・・・。」


勾麟 は心の底から兵士に礼を告げると、懐に短剣を隠した。

“ 追放 ”は“ 死 ”と同じ…
 敵国の“ 印 ”を付けた状態で、国外で生きるのは自殺に等しい行為だった。

そう・・・、

だからこその “ 大罪 ”


「大丈夫!! 私は生き延びてみせる!!」


 力強く勾麟はそう言い放ち…
最後に一時、彼女の事を想うと、彼は畏怖堂々と城を背に歩き出した・・・。

王族として恥じぬよう・・・最後まで凛々しく、一度も振り返る事なく
立派に・・・。



 …それからの 勾麟 の行方は知られていない…

だが“風の噂”によると、 勾麟 は三十五歳まで生き…
生涯を終えたと言う。


< 16 / 46 >

この作品をシェア

pagetop