四 神 〜 しじん 〜
黄竜城・・・。
勾麟 は別れを惜しむように、生まれ育った城を眺めた…
遠くで医師が、慌てて駆けて行くのが見える。
多分“ 麟史 ”の体調が思わしくないのだろう…
“ 麟史 ”
黄竜王 の四男である彼は、まだ四歳。
三男を生んで亡くなった母の変わりに、後妻に入った現王妃の子供である。
生まれつき体が弱く、二歳の時の高熱が元で“子種”が無いと宣告され“ 彼 ”もまた、継承者から外された一人であった…。
「 勾麟様 これを… 」
拘束していた兵士が、極秘に一本の短剣を渡す。
“ 追放 ”される者に一切の持ち物を与える事は禁じられていた…
この兵士も見つかれば、厳しい罰が下されるであろう、だが…
危険も顧みず、少しでも勾麟を助けようとする兵士達・・・。
彼らもまた、勾麟の追放を心から嘆く者達の一部であった…。
「 宣帝 がまた不穏な動きを始めたそうです…僅かながらでもお役に立てれば」
「感謝する・・・。」
勾麟 は心の底から兵士に礼を告げると、懐に短剣を隠した。
“ 追放 ”は“ 死 ”と同じ…
敵国の“ 印 ”を付けた状態で、国外で生きるのは自殺に等しい行為だった。
そう・・・、
だからこその “ 大罪 ”
「大丈夫!! 私は生き延びてみせる!!」
力強く勾麟はそう言い放ち…
最後に一時、彼女の事を想うと、彼は畏怖堂々と城を背に歩き出した・・・。
王族として恥じぬよう・・・最後まで凛々しく、一度も振り返る事なく
立派に・・・。
…それからの 勾麟 の行方は知られていない…
だが“風の噂”によると、 勾麟 は三十五歳まで生き…
生涯を終えたと言う。