四 神 〜 しじん 〜
「なりません!! 王」
既に愛馬である“ 鳳王 ”(ほうおう)の向きを変えている朱雀を、若者は急いで止めに入る。
鳳王 は生粋の南方領生まれの雄馬で、
葦毛だが、その毛色は“ 茶 ”よりも“ 赤 ”に近く、体格も他の馬より大きい。
俊足で、堅い蹄で山々を“ 飛ぶ ”ように駆け抜ける姿から、鳳凰の守護を受ける“ 神馬 ”として、現朱雀が即位した時、贈られた。
「今から城に戻り、即位式の準備をなさらないと・・・。」
「私は式には参加しない」
えっ!?
…予想もしていなかった言葉に、若者の表情が固まる
「・・・しかし…黄竜王の即位式・・・王が行かぬのでは“ 四神 ”としてのお立場が…」
「ならば、お前が行けばいい…
“ 所用 ”の主の代わりだと言えば面目も立つ」
「しかし、それでは兵士達にも示しが・・・あっ!!お待ち下さい、朱雀様!」
若者が気付き、止めようとした時には、既に朱雀は丘を駆け降りていた。