四 神 〜 しじん 〜

「 勾陣様、あちらが
“ 白虎城 ”になります」

 鋭く尖った、鉱物を含む山々の間に見える城を
“ 玄冥 ”(げんめい)は馬を歩るかせながら指差す。
玄冥 は“ 玄武 ”の第一臣下。
“ 灰色 ”の衣を纏った青年だ。


今日は少数の兵達を従え、 匈奴 から 勾陣の護衛を任されていた。


「現在は三兄弟の内、末弟の方が王位を継いでおります」


「……………。」


 何も言わず、勾陣 は馬の手綱を引き締め速度を落とすと、高くそびえる城を見つめた。


「二人の兄君様も“補佐”として今日の即位式にご参加されると思うのですが…。」


 気まずそうに話す彼は、“ すべて ”の事情を知っているのだろう…
気遣う様子があからさまに出ており、それが返って変な空気を作り上げていた。

 その内一行は、剥き出しの岩壁が並ぶ道から、開け放たれた広い場所へと行き着く。

 採掘場なのだろう。

所々に、置きっぱなしにされた作業道具が散らばり、何箇所か開けられたトンネル状の穴には、木で骨組みが敷かれ補強されていた。

 珍しげに 勾陣 は周囲に視線を配る。

遊牧民であった彼には、生まれて初めて見る光景だった。
 今日は“即位式”に合わせ作業は中止され人一人いないが、
今度は是非とも、人々がここで働いている姿を見てみたい…。


 …そう考えていた時、



「ぐわあぁ!!」


甲高い悲鳴と共に、 勾陣 のすぐ後ろの兵士が倒れる

「…………!!!!」


 勾陣、玄冥 の二人が一斉に振り返ったその時、

ドスッ…

 鈍い音と共に、また別の兵士が胸に矢を受けて倒れた!!!

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