四 神 〜 しじん 〜


「あなたが“ 朱雀殿 ”
か?・・・。」


 即位式後の 黄竜城…

 ここ、謁見の間では
今、黄竜王誕生祝いの酒宴が開かれている。


 玉座には“ 黄竜 ”

次席に、向き合って並んでいるのが

匈奴 君主“ 呼韓邪単于” の兄君“ 呼屠吾斯 ”

次位 右賢王“ 握衍 ”

太子 “ 復株累若 ”

臣下 “ 左伊秩王 ”

 の四人…。


三席に円となって座るのが
 四神  玄武 青龍       白虎・・・。
そして、各々の後ろに控えて座るのが、第一臣下の者達…


末席には各城の 四等官達が座っていた。



 黄竜は今、朱雀 の席より一歩下がって座る“橙”の衣を纏う若者に声を掛ける・・・。


「恐れながら 黄竜王 …
私は 南方領王 朱雀 の
第一臣下“ 祝融 ”(しゅくゆう)・・・。

 我が主は外せぬ“所用”にて出席出来ず、式には僭越ながら私が代わりに…」

「…そうか・・・。」


 深々と頭を下げて答える“ 祝融 ”に、黄竜 は答えた…


「それにしても、朱雀 め酒宴にも出席しないつもりか…!?
よもや“支度”で手間取っているのではあるまいな」

「玄武様・・・。」


 過ぎた“発言”に 玄冥 が言葉を諫めた。

青龍、白虎は素知らぬ顔で酒を酌み交わしている。


 玄武は罰が悪そうに辺りを見回すと、
一気に己の盃を空けた。


「…それにしても、この酒宴には“華”が足りぬ…

青龍 、自慢の“楽”を聞かせてくれ!!」


「・・・舞手が居なければ音を鳴らしてもつまらん」

「“ 句芒 ”(こうぼう)」

「わが主の“気”のままに…。」


玄武 の申し出は 青龍 にあっさりと却下され、
 頼みの綱である、青龍
の第一臣下“ 句芒 ”にもやんわりと断られてしまう

青龍 は弦を使う楽器…
 主に“琵琶”の名手であり、
猛ける獅子も 青龍 の楽の音の前では、“赤子のように眠る…”

とまで言われている。


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