四 神 〜 しじん 〜

「“琵琶”を…」


 青龍 が、肌色の衣を纏う侍女に“琵琶”を持って来るよう命令する

「これは何と…!!
久々に 朱雀 の“剣舞”を見る事が出来ようとは!」

 先程とは打って変わって上機嫌の 玄武 は、徐々に盃を空けるペースが速くなる。

 四等官達もより見やすい場所へと移動をし始めていた。



過去 朱雀 が皆の前で
剣舞を舞ったのはもう五年も前の事…。
前朱雀王 退位式のおり、父君の所望で初めて舞を披露した。

 …その“華麗”さたるや“国一番”と謳われた舞姫を遥かに凌ぐほどに…。
 その場に居合わせた者達全員を釘付けにした。



「祝融、剣を」

「御意 !!」


 腰に差した剣を取り、朱雀に渡そうとする……が…

「これを……」


上座からの声と共に
黄竜が自分の“神器”を差し出した。


「黄竜王!! それは…」


 四等官達がどよめき、
紫扇 が慌てて止めに入る

「それは王の“神器”…
いくら朱雀王とて、他者に渡すのは…」


「よいのだ…」


黄竜 は 紫扇 に目を配りそのまま 朱雀 の方を見る

「朱雀殿には今朝、刺客から助けて貰ったばかり…
その礼がしたい」


「……………」


朱雀は黙って黄竜を見…
“神器”へと視線を移す…
そして黄竜の座る玉座の前へと歩み寄った…


 差し出される剣の柄を左手で握る…


シュッ…!!!

 軽い金属音を立て、勢い良く剣が抜かれた!!
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