四 神 〜 しじん 〜

「素晴らしい舞だった…」

 黄竜 の感歎の言葉に
朱雀 は少し頭を下げ、答える。


「これを…お返しする…」


 切り口を自分に向け、
左手に柄を持ち、横向きの状態で 朱雀 は“神器”を黄竜に差し出した…。



 その時………!!


「!!!!!!!」


 “ 四神 ”が思わず、腰を浮かす!!!


 その行動に、他の者達が何事だ!! と、
彼らの顔を見…慌ててそれぞれの視線の行方を辿る…


 が…


 先にあったのは
黄竜 と 朱雀 の姿のみ…

 黄竜 が“差し出した”鞘に、朱雀 が剣を“しまい入れた”所だった。


「…失礼した……」


「大事ない…」


「 ???? 」


朱雀 と 黄竜 の不思議なやり取りに
匈奴の者達はお互いの顔を見合わせる。

 目と鼻の先の者達でさえこの状態だ…

離れた席いる四等官達など気づいてもいないだろう。



 一体何人の者達が
“今の光景”を眼で追う事が出来のか……


 “四神”は少なくとも
“見えて”いる…

 臣下達は……?


“ 句芒 ”以外は全滅のようだ…




 朱雀 が 黄竜 に剣を返す時…

一瞬の内に朱雀は“順手”だった手を“逆手”に持ちかえる…

 その時“弧”を描いた切っ先は、黄竜 の首目がけて横切り、斬り付けた!!


 たが 黄竜 は…
ほんの数ミリの位置で
“それ”を交わすと、
左手に持った鞘で剣先を下から上へと弾き……

そのまま鞘の中へと押し込める…!!



 目に見えぬ早さ!!

刹那の出来事…。




 …これで“すべて”が分かった……


  “守る” 

のか…


  “従う” 

のか……を。



 …そのまま 朱雀 は軽く敬礼すると、席を下がった…。





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