四 神 〜 しじん 〜
「我が子がどうしたと言うのだ!!」


 王は憤慨し、うろたえる乳母達から赤児を引きさらい、腕に抱く。

もしや四肢に異常が…?
 いや、医師は元気だ と言っていた…。

 スヤスヤと眠る顔を布越しに見ても、丈夫で健康そうな感じだ。
美女と謳われた王妃に似て、きっと美しい子に育つだろう…。

…後は何が…。

  乳母は髪がどうの…と言っていた・・・。

赤児を起こさないように、そっとくるまれていた布をめくる…。


「・・・!!!・・・」


王は言葉を失った…。



「…髪が…赤銅…色…?」

 時を思い返す様に、やっとの事で出た声は・・・
うめくような、儚げな音。
 黒曜石のような黒髪を想像していた王には、目の前の我が子の赤く輝く銅色の髪が信じられず、震える指先で髪をこすりあわせる。
 生まれたばかりで、まだ“よごれ”が取り切れてないのだと…。

・・・だが、赤児は産湯で完璧に洗われていた。



「一つの時代が終わりを告げる時…

  鳳凰を現す者…

   ・・・生まれる…」


 自分自身に言い聞かせるかのようにゆっくりと、神薙の夢見を王は繰り返す。

 ・・・だが・・・。


知らず知らずの内に力が入ってしまったのか、腕の中で眠っていた赤児がむづがり、身動きする…  

   そして・・・。

初めてゆっくりと赤児の目が開かれた…。


 「・・・!!!!・・・」


「キャァァァ!!…」


 周りから思わず悲鳴が上がる…!!

 動揺に・・・
腕の力が緩んで、我が子を落としそうになり、王は慌てて体制を整える…
乳母も侍女達も、赤子を受け止めようと、とっさに両腕を出す。

 …が、同時に鳴り響いた零時を知らせる鐘の音で、部屋にいる全員が声にならない悲鳴をあげ、飛び上がった!


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