四 神 〜 しじん 〜
「白虎!!
お前は不足の事態に備えて待機していてくれ!
この分だと、玄武も足留めを食らっている可能性がある…。
このまま終わるとは思えない…」
「解った!…お前は?」
「私はこの道を行く!!!」
「!!!!!!」
…無理だ!!!
ただでさえこの業火。
馬達も怯えて近づけもしないのに…。
「…朱雀王……無理は…」
おやめください……
そう言おうとした祝融
だったが、
朱雀はそっと、
自分を背に乗せる“鳳王”のたてがみをなぜると、
彼に向け、強い言葉で呟いた…
「“鳳王”…
“火”を恐れる事はない…
お前は“鳳凰”の守護を受けし者、
そして“鳳凰”は“火”の化身。
ならば、“火”は敵ではない!
見据えよ。 お前の行くべき場所を!!」
ブルルルル…
…まるで朱雀の言葉を理解しているかのように、
鼻息荒く、耳をそばだて、鳳王はしきりに頭を上下に動かしている。
“力”がみなぎり、
徐々に彼の瞳が力強いものへと変化する…
そして…
“行ってみせる!!”
とばかりに、前脚で地面を掻き出した!!
「行け!!
“鳳凰の申し子”よ!!」
朱雀の掛け声と共に、
鳳王 は二本脚で立ち上がり、辺り一面に響き渡る甲高い声でいななくと、
炎に向かって走りだした!!
…そして!!!
時が止まったかのような感覚…
走り込んでから飛び上がるまで…すべての動きが止まって見える…
激しく脈打つ鼓動も…
美しくたなびく、たてがみも…
しなやかに動く筋肉でさえも………
まるで、空を飛んでいるのではないかと思わせるぐらいの見事な“弧”を描き………
朱雀共々、業火の中へと姿を消した。
「朱雀!!!!」
白虎が焔の中、声を掛ける…
だが、返事はない…
…が、
代わりに、
遠くから 鳳王 の…
自慢気にいななく鳴き声が響き渡った。